運用炎上プロジェクト

Stories 4話:対外コミュニケーション

さて、私がリーダーとメンバーのコミュニケーション不全に取り組む一方で
もう一点、別の課題にも取り組まなくてはいけませんでした。

それはユーザーとのコミュニケーションでした。
これも社内SEとしての必須能力として語った一つです。

システム屋さんっていうのは
結構癖の強い人が多くて、とっつきにくいという世間の評価は
概ね当たっています(笑)

しかし、現場の職人気質の人たちも
別の方向でとっつきにくいケースが往々にしてあります。

この方向性の違うとっつきにくさが、すれ違いや認識誤りを起こして
プロジェクトを難航させたりするのですが、
具体的にどういう風に方向性が違うかというと
システム屋さんは

なんでもかんでも理屈で整理をつけようとする

職人さんは

大体の事を経験で整理をつけようとする

この双方のズレが、
システム屋さんは
「あの人は全然会話になりません。理由を聞いてもまともな返事返ってこないし。あんなんじゃ要件を固めるなんてできませんよ。」
となり、職人さんからすると
「あいつはだめだ。なんでも理屈でうまく行くと思っていて。それでうまく行けば誰も苦労しねぇっつうの」
となってしまい、お互いが「あいつには言っても無駄だ」となってしまい
致命的な認識ズレ(方向性のズレ)などを起こしたりするわけです。

これが当時、工場側のシステム担当者と、
本社側のシステム担当者で起きていました。
先に述べているように本社システム側のAチームの仕事は、
他システム(この場合、工場のシステム)から渡されているデータを取り込んで処理をするのですが、そのデータに誤りがあって、エラーを起こしてしまうと
本社システム担当者は、工場側のシステム担当者に問い合わせを行います。

まず、ここで問題の一つ目が発生していました。
Aチームのメンバーの工場側への問い合わせの内容は

こういうエラーが起きているので、改善してください。明後日までにお願いします。

という、まぁまぁぶっきらぼうな内容でした。
普通は締め切りにせよ、改善の方向性にせよ、軽く打ち合わせでもして、すり合わせをするべきですが、いきなりポーンとこんなメールを送ってしまうあたり、揉める予感しかしません。

ただ、これも理由がなかったわけではなく
先の記事に書いたように本社システムのメンバーが自分たちの作業の目的を理解していない為、その先にある工場側のシステムについても当然理解できておらず、
エラーは解消したいけど、具体的な話は何もできない。しかしエラーは解消しないといけない。
だから、取るものも取り敢えず、こんなメールを投げていたわけです。

しかし、当然、こんな書き方では工場側担当者からすると

は?何言ってんの?そもそもこっちから渡したデータの何が悪いかもわからないし、具体的にどういうエラーが起きているかもわからないし、そんな中でそっちの都合で締め切りなんか切られても、対応できないんですけど!?

となります。

Aチーム側のメンバーも自分の作業の意味がわかってきた後半は
もう少しまともな投げかけをできるようになりましたが、この時点では
工場側の担当者がそう思っても無理はありません。

しかし、工場側も本社側に対し
「工場のことを何も知らないくせに」
という思いがあったのも確かで、工場の事情であったり、
工場側のシステムがこういう作りになっているから、というような理由を
Aチームメンバーに説明をするというような歩み寄りもなかったという面もあります。

ただ、こういう問題は鶏が先か卵が先か
という問題になりがちで、

・Aチームがそういう乱暴なコミュニケーションを取り始めたから、工場側が拗ねてしまったのか
・工場側が没コミュニケーションである為に、Aチーム側の理解が進まなくなってしまったのか

もはや、どっちが先かはわかりません。
そんな状況で、どっちが悪いのか話を始めても全く生産的ではありません。

では、どうするかというと、
ここで私のような新参者の出番が出てくるわけです。
2話で書いた、伝家の宝刀
・入社して3か月ぐらいは何聞いても、ほとんど怒られない
を抜いて、工場側の担当者にヒアリングを進めます。
勿論、この場合のスタイルは低頭平身です。
「いやー、何もわからなくてすいません。けど今後の為にも工場の事を知っておくのは絶対に必要だと思うので、お時間割いてもらえますか?」
という感じで、なんとか相手の心を開いていきます。
その際にはコミュニケーション手段も考えないといけません。

当時、会社はテレワークをかなり進めていたので
コミュニケーションのメインがチャットとメールでした。
勿論、工場側のシステム担当者も同じくなのですが
会社の方針はそれとして
やっぱり、メッセージのやり取りではなく、電話でのやり取りの方を好む人というのは常にいます。

人の心を開こうと思ったら、
コミュニケーション手段もまずは相手の好む方法でとった方が絶対良いです。
一旦、信頼関係が出来上がってしまえば、
徐々にチャットやメールで連絡しても問題なくなります。
相手の脳内に私がしゃべっているイメージが浮かぶからです

なので、「この人は電話の方が絶対いいな」と思った相手には
敢えて、電話して話をしたりしました。
すると、チャットだとつんけんしている人も、電話だとフレンドリーで
あっという間に話がまとまるという事が実際に起こります。

そして、一人でも相手側から信頼を寄せてもらえる人間がチーム内に出来上がれば
後は格段に楽になります。
ややこしそうな話はまず、その人間を介してコミュニケーションを取るようにし、
徐々にチーム同士としての仲の良さを深めていけば、よいのです。

ここまでくれば軌道に乗って、
Aチームメンバーは

私を介すれば話が通る

工場側からすると

私は話が通じる相手だ

となるので、私がハブのような役割になってコミュニケーションを循環させることができます。

人間関係はいったんこじれると、そこを紐解くのは中々に難しいのですが
こういう時に、そこら辺の機微がわかる人間が中途で入ってくれると
潤滑油になってくれたりするので、中途採用の人間にはそういう役割もお願いしてよいと思います。